中古住宅の選択肢はあり?
- Category:暮らしの風景(設計士ブログ)
- Writer:樽角 健一
こんにちは、スタジオカーサの樽角です。
最近、住宅市場の変化に驚かれている方も
多いのではないでしょうか。
2020年から2023年にかけて
土地価格や建築資材の価格が大幅に上昇し
それに伴い新築住宅の価格も高騰しています。
この影響で、「新築は高すぎて手が出ない」
という声をよく耳にするようになりました。
その結果
中古住宅に目を向ける方が増えています。
しかし、私はこの選択に不安を感じています。
中古住宅の現実
私たちスタジオカーサは
創業メンバーがリノベーション会社で出会い
立ち上げた会社です。
そこで多くの中古住宅を見てきました。
その経験から言えるのは
たとえ1981年6月1日以降に建てられた
「新耐震基準」に基づく住宅であっても
注意が必要だということです。
一般的に「新耐震基準の家だから大丈夫」
と考えられがちですが実はそうとも限りません。
新耐震基準の住宅のなかには
現行の耐震基準(2000年6月1日以降)と
異なり作り方が整備されておらず
地震に弱い家があるのです。
例えば、2016年の熊本地震では
1981年から2000年までの「新耐震基準」の
住宅の8割が何らかの損傷を受けたという
報告もあります。
つまり、単に新耐震基準の家であることだけで
安心するのは危険です。
「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書 概要(抜粋)
耐震性の重要性
住宅購入は、多くの方にとって
人生最大の買い物です。
それに加えて、ローンの支払いは通常35年以上
に及びます。
その期間に、大地震に遭遇するリスクは高く
家族や財産を守るためには
住宅の耐震性が何よりも重要になります。
上記のグラフにも記されていますが
現行の耐震基準においても4割の建物が損害を
受けています。
法律で規定されている耐震基準(耐震等級1)
は「命を守る最低限の強度」に過ぎません。
建物が崩壊により命を失わないように
設計されているだけで
その後、その家に住み続けられるように
設計されていません。
だからこそ、中古住宅を選ぶ際には
耐震診断を実施し
必要であれば耐震補強工事を行うことが
不可欠です。
中古住宅を選ぶなら
中古住宅は新築に比べて初期費用が
抑えられることから
魅力的な選択肢に思えるかもしれません。
しかし、住んでから耐震補強や大規模な
改修工事をおこなうと
精神的にも経済的にも大きな負担となる
場合があります。
もし中古住宅の購入を検討されている
のであれば
耐震診断を行える設計事務所や工務店と
一緒に物件を探すことを強くおすすめします。
住まいの耐震性は命に直結するため
何よりも大切です。