二世帯住宅の選び方と注意点
- Category:暮らしの風景(設計士ブログ)
- Writer:樽角 健一
こんにちは、スタジオカーサの樽角です。
最近、二世帯住宅に関するご相談を多くいただいておりますが
以前とは少し事情が変わってきました。
かつては主に親子世帯のご相談が中心でしたが
近年はご結婚されない方も増え
ご兄弟も一緒にお住まいになるなど
ご家族の形態も変化しつつあります。
そのため、これまで以上に二世帯住宅を検討する際に
注意しておくと良い点がいくつかあると感じ
代表的な二世帯住宅の形態について
メリットとデメリットを整理してみました。
ご家族の関係性によって最適な形態が異なりますので
参考にしていただければ幸いです。
また、最後に意外と見落としがちな注意点もお伝えします。
① 独立タイプ
(玄関・水回りがそれぞれの住戸に独立している形態)
メリット
完全なプライバシーの確保
玄関や水回りが独立しているため、シニア世帯と子世帯が
別々の空間で生活でき、生活リズムが異なっても干渉しません。
どちらの世帯も自由度が高く、独立した暮らしが楽しめます。
将来的な柔軟性
シニア世帯がケアホームなどに転居するなどして
必要としなくなった際などに
それぞれの住戸が完全に分かれているため
他人に貸し出すことも可能です。
デメリット
建設コストが高い
水回りやキッチンが2セットになるためことや
水道、電気も単独で2回路設けるため
建築費用や光熱費が高くなります。
また、それぞれの住戸にメンテナンスが必要です。
コミュニケーション不足の可能性
完全に独立しているため、家族間の自然な交流が減り
疎遠になる可能性があります。
広い土地が必要
二つの住戸を設けるため、建物が大きくなり
広い土地が必要です。
法的な制限
玄関を分けて各住戸が完全に分離している場合は
建築的には「長屋」という種類に分けられ
建築の法審査の際に、すこし厳しい条件がつけられます。
それにより、道路の接道面が狭く建築できない敷地
もあります。
② 玄関だけ共用タイプ
(玄関は共用で、水回りは各世帯に独立している形態)
メリット
適度なプライバシー確保
水回りは独立しているため、生活の機能部分で
プライバシーが守られます。
生活リズムが異なっても、干渉は少ないです。
建設コストの節約
玄関が共用のため、独立タイプより建築費を抑えられます。
また、光熱費の共有も可能です。
自然なコミュニケーション
玄関が共用のため、出入りの際に顔を合わせる機会が増え
自然な家族間の交流が促進されます。
デメリット
玄関での干渉の可能性
出入りの時間が重なると、玄関でのスペースの使い方に
ストレスが生じることがあります。
プライバシーの制約
玄関を共有するため、完全なプライバシーを保つことが難しく
来客時に気を使う場面があるかもしれません。
共有部分の管理
玄関の掃除や整理整頓など、共用部分の管理に関して
トラブルが発生することがあります。
③ キッチンだけ独立タイプ
(シニア世帯に独立したキッチンを設け、その他は共用する形態)
メリット
食事の自由度
親世帯が独立したキッチンを持つことで
食事の時間や内容を自由に調整できます。
それぞれの生活リズムに合わせた食事が可能です。
シニア世帯の自立感を保つ
シニア世帯が自分のペースで料理できるため
自立感を保ちやすく、精神的な安心感にもつながります。
柔軟なサポート体制
子世帯が忙しい時には、シニア世帯が料理を手伝いやすく
家族をサポートしやすい体制が整います。
デメリット
プライバシーの低さ
キッチン以外のスペースが共用のため、生活リズムが
重なると干渉が発生しやすくなります。
家事負担の偏り
シニア世帯に料理の負担が集中しやすく
なる可能性があります。家事分担の調整が必要です。
共有部分の利用ルールが必要
リビングやバスルームが共用のため、使い方やメンテナンスに
関して明確なルールを設ける必要があります。
最後に注意点
水道の引込管について
①や②の形態を選ぶ場合、水道管にも注意が必要です。
二世帯分の水道容量を確保するため、通常の一世帯よりも
太い引込管が必要になる場合があります。
この際、道路に埋設されている水道本管から引込を
やり直す必要があり、特に道路がバス通りの場合
費用が100万円を超えることもあります。
相続の遺留分について
親御さんの土地に建設を予定している場合
ご兄弟がいる場合は相続の遺留分に注意が必要です。
敷地が相続財産となり、兄弟に相続の権利が生じる
可能性があるため事前に家族全員でよく話し合い
必要があれば司法書士に相談することをおすすめします。
これにより、相続時のトラブルを避けることができます。
売却について
二世帯住宅が増えたとしても一般的な住宅よりも需要が
少ないことから、将来売却されることになった場合に
買い手が付きにくいことが考えられます。
シニア世帯が亡くなった後に、どのようにお家を使っていくのかも
想定して計画をされ、場合によっては二世帯住宅ではなく
互いの世帯が近所に住まう「近居」の方が経済的なメリットが
ある場合もあります。
自分たちに合った選択を
現代のシニア世代は、子世代の生活を大切にしたいという思いもあって
共助するにしても同居より近居を望む方が増えているそうです。
それぞれがずっと仲良くやっていくためにはどのような方法がベストかを
考えて、同居や近居を検討するとよいでしょう。