注文住宅の安心感を高める「完成保証」
- Category:暮らしの風景(設計士ブログ)
- Writer:樽角 健一
注文住宅の工事中の安心感を高める「完成保証」
こんにちは。スタジオカーサの樽角です。
注文住宅を建てるという大きなプロジェクトを進める際
多くの場合、着工金や中間金など、完成前に工事代金の一部を
お支払いいただくことになります。
そのため
「もしも、建築中に依頼した建設会社(ハウスメーカーや工務店)が
万が一の事情で事業を継続できなくなったら
支払ったお金はどうなるのだろう?」
といったご心配をされる方もいらっしゃるかもしれませんね。
今回は、そうした不安を軽減し、お客様が安心して家づくりを
進められるようサポートする大切な制度
「完成保証」について詳しくご紹介します。
「完成保証」の基本的な仕組みと役割
完成保証とは、注文住宅の建築中に
ご契約いただいた建設会社(ハウスメーカーや工務店など)が
倒産といった事態により工事を中断せざるを得なくなった場合でも
その後の工事が無事に完了するまでを保証する制度です。
「完成保証を利用できます」という表示を見かけることが
あるかもしれませんが、ここで一点、大切な注意点があります。
完成保証は、建設会社そのものに付随するものではなく
個別の「工事」に対して付与されるものだからです。
たとえ完成保証制度に登録している建設会社であっても
お客様の工事がこの保証の対象として登録されていなければ
保証は適用されません。
実際に完成保証を付与する場合、別途費用が発生し
建築請負契約とは別に手続きが必要となるケースがほとんどです
そのため、ご希望の際は、必ず事前に詳細をご確認いただくこと
をおすすめします。
保証の範囲と種類:保証型とエスクロー型
完成保証には、大きく分けて「保証型」と「エスクロー型」の
2種類の形式があります。
それぞれの特徴を理解し、ご自身の家づくり計画に
合ったものを選んでください。
<保証型>
これは、建設会社の事業停止などで工事が中断した場合に
保証会社が増嵩(ぞうすう)工事費用(当初とは別の業者に
引き継ぐ際に発生する追加の工事費用)や
お支払い済みの前払い金の損失の一定割合を保証するタイプです。
<エスクロー型>
この形式では、お客様がお支払いになる工事費用を直接建設会社に
支払うのではなく、信託会社(エスクロー会社)が資金を一旦預かり
管理することで、工事資金全体の保全を図ります。
両者の主な違い
- 保証型 :保証される金額に上限が設定されているため
増嵩工事費用がその上限を超過した場合
追加で資金をご用意いただく可能性がございます。 - エスクロー型:工事資金が適切に管理されているため
原則として増嵩工事に伴う追加費用は発生しない
という点が大きなメリットです。
「完成保証」のご利用にかかる費用
完成保証の利用料は、エスクロー型が保証型よりも高くなる
傾向にあります。保証額によっても変動しますが
一般的な目安は以下の通りです。
- 保証型:5万円~10万円程度
- エスクロー型:15万円~20万円程度
上記のように、完成保証の利用料は決して安価ではないため
実際に利用されない選択をされるお施主様が多いです。
しかし、完成保証制度に登録し、その保証を提供できる
工務店は毎年厳格な審査を受けています。
この審査では、会社の経営状態が一定水準以上であることが
求められ、これをクリアできなければ制度への登録を継続できません。
このことは、完成保証を扱える会社がその制度に登録するために
継続的に経営状況の健全性を外部からチェックされているということ
を意味します。
そのため、その建設会社が比較的倒産リスクが低く
健全な経営を行っていることの一つの客観的な判断材料になると
言えるでしょう。
もちろん、完成保証を登録していない建設会社でも
健全な経営を行っている企業は多数存在しますし
利用機会が稀であることから、あえて登録しない方針の会社もあります。
逆に、完成保証に登録している会社も「絶対に倒産しません」と
断言することはできません。
だからこそ、完成保証は「万が一の事態への備え」として
そして「その建設会社が経営的に安定しているかどうかの判断材料の一つ」
として、ご検討いただく価値があるものと考えています。
もし、完成保証を付けることで注文住宅の家づくりにおいてより
大きな安心感を得られるのであれば
検討されるのも良い選択かもしれません。
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