注文住宅で実現する快適さ|堀部安嗣氏の「90と30」の魅力
- Category:暮らしの風景(設計士ブログ)
- Writer:樽角 健一
快適な暮らしは、注文住宅を建てる方々が皆さん望むことだと思います。
では、高断熱・高気密で省エネなお家を建てれば
それだけで快適な暮らしが手に入るのでしょうか?
今回は、先日受講したセミナーで建築家の堀部安嗣さんが話された内容が
家づくりのヒントになりそうでしたので、私の備忘録を皆さんと共有したいと思います。
※堀部安嗣さんについて詳しくは、ぜひ検索してみてくださいね。
以下は堀部さんのお話のメモです
[テーマ] 堀部安嗣氏に聞く、これからの住まい
〜90の安定と30のゆらぎ〜
堀部さんは、ベンチだけの屋根や木の木陰もない外部空間を「0」としたとき、
- 90は、安定した快適なエリア(高断熱・高気密)
- 30は、不安定でありながらも快適なエリア(半屋外)
と定義しました。
そして、90と30を繋ぐことがこれからの住まいにとって大切だとおっしゃっていました。
《90の魅力》
- 心身を守るシェルターとしての住まい
- 環境や暮らしの変化への対応
- 省エネルギーの達成
《30の魅力》
- 不安定であることが心身に与える効能
- 外気に心身をさらすことで得られる快適さ
- 建築構造を見せられる良さ
- 空調や換気システムが不要
- 庭との連続性、コミュニティとのつながり、社会参加の促進
- 寛容な心を育み、自然を受け入れること
多くの方が「60」の家に住んできた経験があり、断熱等級5・6・7の設定により、「90」の魅力を中心とした家づくりが進んでいます。
《90だけの家の問題点》
- 四季を感じにくい
- 自分だけが快適であれば良いと考えがちになる
- すべてがコントロールできる環境に慣れてしまう
- 町や庭との接点が減る
- 建築構造が見えにくくなる
- 建物の佇まいが失われる
「30」は日々の生活に必須ではないように思えますが
人は「30」を求めて、カフェテラスや屋台、キャンプ
露天風呂などにわざわざ出かけるものです。
季節の良いときには窓を開けて自然の風を感じたくなったり
縁側に腰をかけて草木の匂いを楽しんだりします。
そして、子どもたちも「30」を大好きです。なぜでしょうか?
ここで切り取った部分には説明が必要かもしれませんが
家づくりのヒントになるフレーズがいくつかあると思います。
堀部さんのお話を伺って
これからの家づくりは「快適な暮らし」から「健やかな暮らし」へと
シフトすべきだと感じました。
私たちは、自然に近いところに住みながら少しずつ家の性能を向上させ
「90」の家を建てるようになり快適な暮らしを手に入れてきましたが
同時に自然との距離ができ、気づかぬうちに何かを失っていると感じます。
堀部さんが仰った
「人と人が直接つながるよりも、自然や時を介して関わるのがよい」
という言葉がとても印象的でした。
「30」を取り入れた家づくりは、人と自然を近づけ
人と人との関係も良くすることができるのです。
多くの方が二人以上で住まいを計画されるので
人と人との良好な関係は、健やかな暮らしにとって何よりも大切だと思います。
堀部さんも強調していましたが
都市の住まいにこそ「30」が必要です。
限られた土地でも諦めずに「30」を取り入れ
日々のストレスをリセットし
新しい日への活力を取り戻す。
そんな、住まいの本質に沿った家を一緒に作りたいですね。
※写真は当社が設計した「30」の一例です。